3Dベア・ナックルII配信記念特別企画【パート1】
いつもは「みんなでまもって騎士」の記事が多いのですが、
今回は趣向を変え、ベア・ナックルIIについて書きたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、ニンテンドー3DSでセガゲームスさんが展開されております
セガ3D復刻プロジェクトでベア・ナックルIIの配信が決定しました(2015年4月28日配信予定)。
これまでにもバーチャルコンソールを初め、各ハードウェアで幾度となく
ベア・ナックルシリーズは配信されてきましたが、
今回はなんといってセガ3D復刻プロジェクトです! どんな立体化が?
どんなアレンジが? 隠しフィーチャーとかあったりするの?とか…
期待は膨らむばかりなのです!
ベア・ナックルシリーズでは弊社代表の古代祐三が曲を担当させていただきましたが、
今回配信されるベア・ナックルIIでは弊社がゲームの企画・開発も担当させていただきました。
当時の話をしているうちに、倉庫にある企画・仕様書類が見たくなり、
大量の書類を発掘してまいりました。
今と違い、データではなく全ての情報が紙ベースとなっており、
最終的な書類はそのままファイリングされて残っています。
むしろ昨今のゲームの方がデータを記録したメディアの破損によって読めなくなる確率は高く、
長い目で見るとこうした80~90年代のゲームに関する情報の方が残ることになるかもしれませんね。
出てきた書類はどれも面白く、ついつい仕事を忘れて懐かしの書類に見入ったり、
苦労話などを当時のスタッフから聞かせてもらいました。
こういった話しはレトロゲームが好きな人には大変なご馳走なのですが、
なかなか表に出てくる機会も少なく、常々タイミングを見て公開できないかと考えておりましたが、
今回こうした絶好の機会もあってブログ記事を作成してみました。
こうした資料と共に3Dベア・ナックルIIを遊ぶと、
より一層楽しめるのではないかと思います。
記事は二部構成となっています。
今回は第一部として、発掘した資料の紹介と説明、
第二部では、ベア・ナックルIIのメイングラフィックデザイナー古代彩乃のインタビュー記事を予定しております。
資料はとても多く、とても全部をデータ化するのは大変な作業量となってしまいます。
そこで面白そうなものを選りすぐりスキャンし、まとめておきました。
このブログはFC2ブログですが、元画像が消えることがあるので、
一応以下のアドレスにバックアップを置いておきます。
ベア・ナックルII開発資料
一つ一つの画像にコメントすると大変なボリュームになってしまいますので、
補足が必要な物のみに絞っていきます。
ここに掲載していない資料も上記のアーカイブにありますので、
ご興味ある方はご覧ください。
また、説明は技術的な内容が多くなります。
できるだけ専門知識がわからない方でも、わかりそうに書く努力はしますが、
厳しそうでしたら、資料をパラパラ見るだけでも良いので楽しんでください。
それでは、資料を見てまいりましょう!



いきなり技術的な話しで申し訳ないですが…。
この書類はベア・ナックルIIにおける、メモリ内の画像データの配分を表しています。
BG/BGOBJというのは背景や背景に設置されたオブジェクト類という意味で、
280chr(常駐)というのは280キャラ(1キャラは8x8ピクセル)、
常駐というのは、シーン中はメモリに置きっぱなしにする、という意味です。
(シーンはゲーム中の暗転で切り替わるところまでを1シーンとします)
転送というのは、ロムの中にあるデータを(条件に応じて)メモリに転送して使っています。
現行ハードと違い、当時はメモリが少ないため、
細部に至るまでメモリの用途をキッチリと定め、
その範囲内でのやりくりがとても重要だったのです。
キャラというのがピンと来ない方も多いかと思います。
この頃のゲームの背景は8x8ピクセルを基準に作られていて、
これらを組み合わせて一つの絵を作っています。
ベア・ナックルIIでは背景用に8x8ピクセルのパーツを
280個+104個分領域が用意されています。
といっても、数字だけではあまりピンと来ませんよね…。
メガドライブの画面解像度は320x224ピクセルですので、
キャラ数としては40x28キャラとなります。
40x28=1120キャラですので、確保された領域では1画面の1/3程度分しかありません。
これでは豪勢な一枚絵を背景に置くことは到底できません。
シーン内の背景をこれだけのパーツ数でまかなうのは大変だったことでしょうね…。
次にプレイヤーなんですが、主人公ということもありアクションが豊富なので、
全てを配置するとメモリを大量消費してしまいます。
そこで、毎フレームごとに各ポーズのドット絵をロムからメモリへ転送しています。
転送は処理負荷が大きいのでなんでもかんでも転送、というわけにはいきませんが、
『処理の高負荷』と、『豊富なキャラパターン』のトレードオフでゲームの味付けに大きな効果を与えています。
転送と常駐の違いにパーツの組み合わせの問題もあります。
ザコは全て常駐なのですが、例えばザコの顔パーツなどは各ポーズで使いまわすため、
バラバラのパーツをツール上で組み合わせてパターンを作っています。
このデータを使い実機上で各パターンを表示します。
つまりメモリ内には最低限のパーツだけを配置し、それらを組み合わせてキャラクターを表現しているわけです。
しかし、転送では処理負荷や仕様上の理由から上記のようなパーツの組み合わせでキャラを表現できず、
常に各パターンをベタに転送しています。
つまり、同じ顔のポーズでも(たとえ上半身が全く同じであっても)全て別データとしてロムに格納しています。

イメージとしてはこんな感じです。
ザコキャラは全てが常駐となっています。
少ない領域内にギリギリまで詰め込まれており、
どこまで動きを表現できるか試されます。
逆にボスは1人しか出てきませんので、転送となっています。
この転送というやり方はロムだからこそできるテクニックで、
その後のディスクメディアのゲームでは、
読み出し速度の関係で毎フレーム転送することは難しくなりました。
ディスクメディアではまた違ったテクニックもあるのですが、それはまた別の機会にでも…。
残りはアスキー、顔、エフェクト類となっています。
アスキーというのは今でいうフォントで、顔はプレイヤーと、
攻撃した対象のグラフィックですね。2人用も可能ですので4人分あります。



この辺はグラフィックデザイナーが作成した、
データ作成や演出の指針ですが、ゲーム内容に関する表現についても言及されています。
昨今のゲーム製作ではデータ作成仕様と演出は分けて考えられることが多く、
昔のゲームでは一人で何役もこなしていた様子がうかがえます。
ダメージの時にはキャラクターがダメージのポーズでブルブルします。
ブルブルは3フレームごとに2ドットで、2往復のようです。
ベア・ナックルIIの1フレームは1/30秒ですので、
ブルブルといっても、結構ゆっくりです。
ゆっくり目にしたのはダメージの重さを考えて決めたそうです。
(速いとコミカルで軽い印象を受ける)
また、資料から察するにグラフィックデータの作成はNEC社のPC-9801を使用していたようです。

















敵キャラクターのイメージイラストです。
弊社古代彩乃が開発チーム向けに描いたもので、
恐らく外には出していないかと思います。


先にも書いた通り、この世代のゲーム機では8x8ピクセルを基準に画面を構成しています。
そのため、この書類のようなレイアウト用紙がセガさんによって提供されていました。
今のゲーム機ではこうした制限がないうえ、PhotoShopのような強力な画像加工ツールがあるため、
自由に最終イメージに近いレイアウト作業が早い段階でできますが、
この世代ではこうした手書きレイアウトでゲームの雰囲気を掴んでいました。

























各プレイヤーキャラクターの資料です。
初期資料のため、ボツになった技などもありますね。

いわゆるコリジョンについての説明です。
攻撃を相手にダメージを与えるためには、
攻撃用のヒットコリジョンと、防御側のダメージコリジョンが必要です。
コリジョンは、位置と、大きさ、フレーム数などの情報が基本です。
ベア・ナックルIIでは攻撃側は大きさがない代わりに位置という情報があり、
防御側は位置がない代わりに、大きさの指定があるようです。

ダメージを喰らったキャラの表現指針です。
キャラパターンは節約のために、別用途として使われることがあるため、
こうした指針をキッチリさせる必要がありました。





背景作成指針資料ですね。
ツールで背景の画面を一つずつセーブし、それをゲーム内で繋ぎなおしているようです。
画面解像度は320x224ピクセルですが、背景は256x256ピクセル分を1画面として扱っています。
ベア・ナックルIIでは斜めにスクロールするために、画面を多めに用意する必要があり、
そういった仕様などについても書かれています。
また、320x224の解像度では、ピクセルの比率がやや縦長になるため、
107x100ピクセルで正方形になるように描くよう注意がされています。
小さい物なら無視できるレベルでも、大きい物体では気になってくるんでしょうね。
また、グラデーション表現が苦手なマシンとありますが、
メガドライブは色数の制限が厳しく、16色のパレットを4本しか使えませんでした。
もう少し詳しく書くと、全512色から16色のパレットを4つ作り、
各キャラにどのパレットで描くかを指定します。
同世代機のスーパーファミコンに比べると非常に少ないのですが、
逆に64色に制限されることで全体の調和がうまれ、
独特な統一感となり、それがメガドライブらしさに繋がっています。
グラデーションに色を割くことはできませんが、ハッキリした色使いとTVの滲みを応用して
画面にメリハリを生むことが当時のテクニックであることがうかがい知れます。

この資料ではマンホールから出てくる敵キャラについて書かれています。
3Dのゲームなら、単純に穴から敵が出てくれば良いのですが、
2Dのゲームではそうはいきません。
背景の穴は実際には穴ではなく黒い床だからです。
そこで穴から敵が出てくるように見せるために、
マンホールの形状でくりぬいたマスクを用意し、
キャラクターを描くときに、マスクを使って穴から出てきているように見せています。
この時の優先順位の付け方に当時のノウハウが見えます。

スポットライトの表現は今なら半透明を使うのですが、
メガドライブにはそういった機能はありません。
そこで透明ピクセルと不透明ピクセルを市松模様に配置することで
疑似的に半透明を表現しています。
この表現は当時の滲みやすいTVだからこそ美しく見えるのですが、
ピクセルがハッキリ見える昨今のモニタでは反って汚く見えてしまいます。

上の画像は海外サイトからベアナックルIIの画像を引用いたしました。
左が元画像で、右は私がTVモニタ風にアレンジしたものです。
右の方では全体がボケることで市松模様のザラつき感が薄れていることがわかると思います。
実際のTVではもっと荒くなるため、さらにキレイに透明に感じられます。
セガ3D復刻プロジェクトでのメガドライブタイトルではTV画面風フィルターのクラシックモードがありますので、
そちらで見るとこの表現が映えることでしょうね。


メガドライブには背景用のスクリーンが2枚あり、
重ね合わせて表示することで二重のスクロールを表現することができました。
単純に二重スクロールとして使うだけでなく、
各社競うようにアイデアを出し、想像以上の表現でプレイヤーを楽しませてくれました。
ベア・ナックルIIの一面のラストでは降り注ぐ雨の中での決闘シーンが印象的ですが、
この指示書では雨の表現について書かれています。
雨が降るだけであれば、雨の背景をスクロールさせるのが良いのですが、
雨が地面に着いたときの波紋も背景で表現するとなるとそうはいきません。
そこで4画面分の雨振りパターンを用意し、切り替えて表現することで
雨が降っているように見せるアイデアが出されました。
同じようなケースで、4面ボス『アバデデ』との戦いの背景では、
大勢いる観客の動きもパターン切り替えで表現されています。
転送を使うと処理負荷が増すため、
パターン切り替えを使うことで負荷を軽減しています。



ベア・ナックルIIの2面3面ではエイリアンのような背景のステージ印象的ですよね。
ベア・ナックルの世界観はとてもリアルですので、
どうしても似通った画面が続きやすいという問題点がありました。
少しでも毛色の違う画面を入れたかったそうで、
アミューズメントパークというアイデアを入れたそうです。
ざっくりと紹介したつもりですが、
かなり長い記事になってしまいましたね…。
これでも資料の1/5程度ですので、全部紹介したら大変なことになりそうです…。
次回はベア・ナックルIIのキャラクターデザイン、メイングラフィックを務めた
弊社デザイナー古代彩乃のインタビュー記事を掲載したいと思います。
なかなか表には出ない人ですので、貴重なお話しが聞けるといいですね!
※記事中で表記に誤りがあったので訂正いたしました。
(セガ3D復刻プロジェクトを3D復刻アーカイブスと表記してました…。)
(大変、失礼いたしました!!)
【パートIIはこちら】
[Karu_gamo]
今回は趣向を変え、ベア・ナックルIIについて書きたいと思います。
ご存知の方も多いと思いますが、ニンテンドー3DSでセガゲームスさんが展開されております
セガ3D復刻プロジェクトでベア・ナックルIIの配信が決定しました(2015年4月28日配信予定)。
これまでにもバーチャルコンソールを初め、各ハードウェアで幾度となく
ベア・ナックルシリーズは配信されてきましたが、
今回はなんといってセガ3D復刻プロジェクトです! どんな立体化が?
どんなアレンジが? 隠しフィーチャーとかあったりするの?とか…
期待は膨らむばかりなのです!
ベア・ナックルシリーズでは弊社代表の古代祐三が曲を担当させていただきましたが、
今回配信されるベア・ナックルIIでは弊社がゲームの企画・開発も担当させていただきました。
当時の話をしているうちに、倉庫にある企画・仕様書類が見たくなり、
大量の書類を発掘してまいりました。
今と違い、データではなく全ての情報が紙ベースとなっており、
最終的な書類はそのままファイリングされて残っています。
むしろ昨今のゲームの方がデータを記録したメディアの破損によって読めなくなる確率は高く、
長い目で見るとこうした80~90年代のゲームに関する情報の方が残ることになるかもしれませんね。
出てきた書類はどれも面白く、ついつい仕事を忘れて懐かしの書類に見入ったり、
苦労話などを当時のスタッフから聞かせてもらいました。
こういった話しはレトロゲームが好きな人には大変なご馳走なのですが、
なかなか表に出てくる機会も少なく、常々タイミングを見て公開できないかと考えておりましたが、
今回こうした絶好の機会もあってブログ記事を作成してみました。
こうした資料と共に3Dベア・ナックルIIを遊ぶと、
より一層楽しめるのではないかと思います。
記事は二部構成となっています。
今回は第一部として、発掘した資料の紹介と説明、
第二部では、ベア・ナックルIIのメイングラフィックデザイナー古代彩乃のインタビュー記事を予定しております。
資料はとても多く、とても全部をデータ化するのは大変な作業量となってしまいます。
そこで面白そうなものを選りすぐりスキャンし、まとめておきました。
このブログはFC2ブログですが、元画像が消えることがあるので、
一応以下のアドレスにバックアップを置いておきます。
ベア・ナックルII開発資料
一つ一つの画像にコメントすると大変なボリュームになってしまいますので、
補足が必要な物のみに絞っていきます。
ここに掲載していない資料も上記のアーカイブにありますので、
ご興味ある方はご覧ください。
また、説明は技術的な内容が多くなります。
できるだけ専門知識がわからない方でも、わかりそうに書く努力はしますが、
厳しそうでしたら、資料をパラパラ見るだけでも良いので楽しんでください。
それでは、資料を見てまいりましょう!



いきなり技術的な話しで申し訳ないですが…。
この書類はベア・ナックルIIにおける、メモリ内の画像データの配分を表しています。
BG/BGOBJというのは背景や背景に設置されたオブジェクト類という意味で、
280chr(常駐)というのは280キャラ(1キャラは8x8ピクセル)、
常駐というのは、シーン中はメモリに置きっぱなしにする、という意味です。
(シーンはゲーム中の暗転で切り替わるところまでを1シーンとします)
転送というのは、ロムの中にあるデータを(条件に応じて)メモリに転送して使っています。
現行ハードと違い、当時はメモリが少ないため、
細部に至るまでメモリの用途をキッチリと定め、
その範囲内でのやりくりがとても重要だったのです。
キャラというのがピンと来ない方も多いかと思います。
この頃のゲームの背景は8x8ピクセルを基準に作られていて、
これらを組み合わせて一つの絵を作っています。
ベア・ナックルIIでは背景用に8x8ピクセルのパーツを
280個+104個分領域が用意されています。
といっても、数字だけではあまりピンと来ませんよね…。
メガドライブの画面解像度は320x224ピクセルですので、
キャラ数としては40x28キャラとなります。
40x28=1120キャラですので、確保された領域では1画面の1/3程度分しかありません。
これでは豪勢な一枚絵を背景に置くことは到底できません。
シーン内の背景をこれだけのパーツ数でまかなうのは大変だったことでしょうね…。
次にプレイヤーなんですが、主人公ということもありアクションが豊富なので、
全てを配置するとメモリを大量消費してしまいます。
そこで、毎フレームごとに各ポーズのドット絵をロムからメモリへ転送しています。
転送は処理負荷が大きいのでなんでもかんでも転送、というわけにはいきませんが、
『処理の高負荷』と、『豊富なキャラパターン』のトレードオフでゲームの味付けに大きな効果を与えています。
転送と常駐の違いにパーツの組み合わせの問題もあります。
ザコは全て常駐なのですが、例えばザコの顔パーツなどは各ポーズで使いまわすため、
バラバラのパーツをツール上で組み合わせてパターンを作っています。
このデータを使い実機上で各パターンを表示します。
つまりメモリ内には最低限のパーツだけを配置し、それらを組み合わせてキャラクターを表現しているわけです。
しかし、転送では処理負荷や仕様上の理由から上記のようなパーツの組み合わせでキャラを表現できず、
常に各パターンをベタに転送しています。
つまり、同じ顔のポーズでも(たとえ上半身が全く同じであっても)全て別データとしてロムに格納しています。

イメージとしてはこんな感じです。
ザコキャラは全てが常駐となっています。
少ない領域内にギリギリまで詰め込まれており、
どこまで動きを表現できるか試されます。
逆にボスは1人しか出てきませんので、転送となっています。
この転送というやり方はロムだからこそできるテクニックで、
その後のディスクメディアのゲームでは、
読み出し速度の関係で毎フレーム転送することは難しくなりました。
ディスクメディアではまた違ったテクニックもあるのですが、それはまた別の機会にでも…。
残りはアスキー、顔、エフェクト類となっています。
アスキーというのは今でいうフォントで、顔はプレイヤーと、
攻撃した対象のグラフィックですね。2人用も可能ですので4人分あります。



この辺はグラフィックデザイナーが作成した、
データ作成や演出の指針ですが、ゲーム内容に関する表現についても言及されています。
昨今のゲーム製作ではデータ作成仕様と演出は分けて考えられることが多く、
昔のゲームでは一人で何役もこなしていた様子がうかがえます。
ダメージの時にはキャラクターがダメージのポーズでブルブルします。
ブルブルは3フレームごとに2ドットで、2往復のようです。
ベア・ナックルIIの1フレームは1/30秒ですので、
ブルブルといっても、結構ゆっくりです。
ゆっくり目にしたのはダメージの重さを考えて決めたそうです。
(速いとコミカルで軽い印象を受ける)
また、資料から察するにグラフィックデータの作成はNEC社のPC-9801を使用していたようです。

















敵キャラクターのイメージイラストです。
弊社古代彩乃が開発チーム向けに描いたもので、
恐らく外には出していないかと思います。


先にも書いた通り、この世代のゲーム機では8x8ピクセルを基準に画面を構成しています。
そのため、この書類のようなレイアウト用紙がセガさんによって提供されていました。
今のゲーム機ではこうした制限がないうえ、PhotoShopのような強力な画像加工ツールがあるため、
自由に最終イメージに近いレイアウト作業が早い段階でできますが、
この世代ではこうした手書きレイアウトでゲームの雰囲気を掴んでいました。

























各プレイヤーキャラクターの資料です。
初期資料のため、ボツになった技などもありますね。

いわゆるコリジョンについての説明です。
攻撃を相手にダメージを与えるためには、
攻撃用のヒットコリジョンと、防御側のダメージコリジョンが必要です。
コリジョンは、位置と、大きさ、フレーム数などの情報が基本です。
ベア・ナックルIIでは攻撃側は大きさがない代わりに位置という情報があり、
防御側は位置がない代わりに、大きさの指定があるようです。

ダメージを喰らったキャラの表現指針です。
キャラパターンは節約のために、別用途として使われることがあるため、
こうした指針をキッチリさせる必要がありました。





背景作成指針資料ですね。
ツールで背景の画面を一つずつセーブし、それをゲーム内で繋ぎなおしているようです。
画面解像度は320x224ピクセルですが、背景は256x256ピクセル分を1画面として扱っています。
ベア・ナックルIIでは斜めにスクロールするために、画面を多めに用意する必要があり、
そういった仕様などについても書かれています。
また、320x224の解像度では、ピクセルの比率がやや縦長になるため、
107x100ピクセルで正方形になるように描くよう注意がされています。
小さい物なら無視できるレベルでも、大きい物体では気になってくるんでしょうね。
また、グラデーション表現が苦手なマシンとありますが、
メガドライブは色数の制限が厳しく、16色のパレットを4本しか使えませんでした。
もう少し詳しく書くと、全512色から16色のパレットを4つ作り、
各キャラにどのパレットで描くかを指定します。
同世代機のスーパーファミコンに比べると非常に少ないのですが、
逆に64色に制限されることで全体の調和がうまれ、
独特な統一感となり、それがメガドライブらしさに繋がっています。
グラデーションに色を割くことはできませんが、ハッキリした色使いとTVの滲みを応用して
画面にメリハリを生むことが当時のテクニックであることがうかがい知れます。

この資料ではマンホールから出てくる敵キャラについて書かれています。
3Dのゲームなら、単純に穴から敵が出てくれば良いのですが、
2Dのゲームではそうはいきません。
背景の穴は実際には穴ではなく黒い床だからです。
そこで穴から敵が出てくるように見せるために、
マンホールの形状でくりぬいたマスクを用意し、
キャラクターを描くときに、マスクを使って穴から出てきているように見せています。
この時の優先順位の付け方に当時のノウハウが見えます。

スポットライトの表現は今なら半透明を使うのですが、
メガドライブにはそういった機能はありません。
そこで透明ピクセルと不透明ピクセルを市松模様に配置することで
疑似的に半透明を表現しています。
この表現は当時の滲みやすいTVだからこそ美しく見えるのですが、
ピクセルがハッキリ見える昨今のモニタでは反って汚く見えてしまいます。

上の画像は海外サイトからベアナックルIIの画像を引用いたしました。
左が元画像で、右は私がTVモニタ風にアレンジしたものです。
右の方では全体がボケることで市松模様のザラつき感が薄れていることがわかると思います。
実際のTVではもっと荒くなるため、さらにキレイに透明に感じられます。
セガ3D復刻プロジェクトでのメガドライブタイトルではTV画面風フィルターのクラシックモードがありますので、
そちらで見るとこの表現が映えることでしょうね。


メガドライブには背景用のスクリーンが2枚あり、
重ね合わせて表示することで二重のスクロールを表現することができました。
単純に二重スクロールとして使うだけでなく、
各社競うようにアイデアを出し、想像以上の表現でプレイヤーを楽しませてくれました。
ベア・ナックルIIの一面のラストでは降り注ぐ雨の中での決闘シーンが印象的ですが、
この指示書では雨の表現について書かれています。
雨が降るだけであれば、雨の背景をスクロールさせるのが良いのですが、
雨が地面に着いたときの波紋も背景で表現するとなるとそうはいきません。
そこで4画面分の雨振りパターンを用意し、切り替えて表現することで
雨が降っているように見せるアイデアが出されました。
同じようなケースで、4面ボス『アバデデ』との戦いの背景では、
大勢いる観客の動きもパターン切り替えで表現されています。
転送を使うと処理負荷が増すため、
パターン切り替えを使うことで負荷を軽減しています。



ベア・ナックルIIの
ベア・ナックルの世界観はとてもリアルですので、
どうしても似通った画面が続きやすいという問題点がありました。
少しでも毛色の違う画面を入れたかったそうで、
アミューズメントパークというアイデアを入れたそうです。
ざっくりと紹介したつもりですが、
かなり長い記事になってしまいましたね…。
これでも資料の1/5程度ですので、全部紹介したら大変なことになりそうです…。
次回はベア・ナックルIIのキャラクターデザイン、メイングラフィックを務めた
弊社デザイナー古代彩乃のインタビュー記事を掲載したいと思います。
なかなか表には出ない人ですので、貴重なお話しが聞けるといいですね!
※記事中で表記に誤りがあったので訂正いたしました。
(セガ3D復刻プロジェクトを3D復刻アーカイブスと表記してました…。)
(大変、失礼いたしました!!)
【パートIIはこちら】
[Karu_gamo]
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ジャンル : ゲーム